発達障がい児母のための笑顔になるアロマセラピー

【1】自閉症を改善!?脳内ホルモン「オキシトシン」とは何か?

自閉症は先天的な脳機能の障害だから治ることはないと言われます。でも、治らないと言われても、親としては、なんとか少しでも改善して欲しいと願います。

そんな願いへの一縷の希望が脳内ホルモン「オキシトシン」です。東大の研究では自閉症の成人男性へオキシトシンを投与すると常同行動が軽減することが確認されています。

「自閉症の特効薬になるかも?」
自閉症改善効果についての研究が進む「オキシトシン」は「愛情ホルモン」と呼ばれることもあります。「オキシトシン」とは一体何なのか?増やすことはできるのか?ということについてまとめました。

自閉症改善の希望「オキシトシン」

オキシトシン研究への期待

最近はテレビでも取り上げられたりして、知っている人も多い「オキシトシン」
私が初めてその言葉を見たのは、東大の自閉症研究の記事でした。
オキシトシンで自閉症が改善する可能性があるので臨床検査をするというものでした。
その後、治験参加者の募集もありましたが、成人で自閉症以外の障害や持病がないことが条件だったので、残念ながら、未成年で知的障害やてんかんもあるりょうたは応募できませんでした。
それでも、この記事を見たときは、「治らないと言われている自閉症が治療できるようになるのかも?」とわくわくしたものです。
ただ、この時りょうたは小学校高学年。
もし、実験がうまくいったとしても、治療薬が作られて実用化されるのは、随分先のことになりそうでした。
その時、りょうたはいくつになっているでしょうか?
そもそも、私はただのいち母親で、医者や研究者ではないので、データを取って、効果を検証する必要はありません。可能性があってリスクのない方法で試すことができるなら、とにかくやってみたいと思いました。
オキシトシンというのは脳内の神経伝達物質で、体内にあるものです。
自分で作り出すことができるものなら、増やす方法があるかもしれない!
そう考えて、オキシトシンについて調べまくりました。

オキシトシンは脳内ホルモン

「オキシトシン」と聞いて「愛情ホルモンね!」と答える人が増えたのはここ数年の話です。以前は、出産や授乳にかかわる女性ホルモンだと言われていました。
オキシトシンは脳の視床下部にある室傍核(しつぼうかく)という部分で作られます。これが下垂体から血中に入り、出産の際には子宮を収縮させて赤ちゃんを生み出す力になります。また、乳汁の分泌を促す働きもあります。(図の赤い矢印)
でも、そのオキシトシンは、なぜか男性や子どもにも存在していたのです。
出産も授乳もしない男性や子どもにオキシトシンが存在するということは、オキシトシンには別の働きがあるのではないかと考えられました。
そうして分かったのが、脳内の神経伝達物質としての働きです。(図の青い矢印)
室傍核から直接脳の神経細胞に伝わり、心や感情に働きかける脳内ホルモンなのです。

オキシトシンの重要な働き

オキシトシンが働くためにはオキシトシン受容体という、オキシトシンによってスイッチの入る鍵穴のようなものが必要です。
この、オキシトシン受容体は体内の色々な場所に存在していて、これからオキシトシンの研究が進んでいくと、さらなるオキシトシンの働きが明らかになる可能性がありますが、現在、わかっているだけでも以下のようなものがあります。

○ストレスの緩和(精神的ストレス、身体的ストレスの両方を抑制)
○母性脳の形成
○不安や恐怖の軽減
○男女の愛を育む(持続性のある穏やかな愛、浮気防止)
○人間関係を円滑にする
○自閉症の成人男子は他者の感情を読み取る能力向上(東大の実験による)

他にも、学習能力の向上や痛みの緩和、ダイエット効果などについても注目されているようです。
幸せホルモンといわれる、セロトニンの活性と分泌を促進する働きもあるので睡眠や心の安定にも効果があります。
(セロトニンは幸福感や美容と関係の深い脳内ホルモンですが、更年期になると減少していき、それが原因で更年期うつを引き起こすこともあります。)

オキシトシンってすごいでしょう?
スタートは、自閉症の息子のオキシトシンを増やしたいという思いでしたが、
知れば知るほど、母である私たちにも、というかむしろ私たちにこそ、オキシトシンが必要だと思いませんか?

オキシトシンの増やし方

オキシトシンの増やし方

オキシトシンは、元々、私たちの身体の中で作られるものです。
では、オキシトシンはどうやったら増やせるのでしょうか?
残念ながら、「オキシトシンを増やす食べ物」などはないのですが、(オキシトシンは分子構造が大きくて仮にそのものを口から摂取したとしても分解されてしまう)関係性の中で働く脳内ホルモンなので、意外に簡単なことで増やすことができます。

親しい人と触れ合う

皮膚は単なる外界との境界ではなく、第3の脳と言われ、脳と同じように高度な神経伝達機能があります。だから肌に触れることは脳に触れるようなもので、触れ合いによってオキシトシンが増加します。これは、簡単にできて最も効果的な方法です。ただ、相手との関係が重要です。嫌いな人との触れ合いは逆にストレスホルモンを増加させてしまうからです。

本物のバラやジャスミンの香りをかぐ

オキシトシンは女性の美しさとも関係があるので化粧品メーカーが様々な研究をしています。
某化粧品メーカーの実験で、花の香りで成人女性のオキシトシンが増加したというデータがあります。紹介されていたのは、バラ、ジャスミン、ネロリ(オレンジの花)など、アロマセラピーでもおなじみの香りです。

ただ、芳香成分の精油は、どれも大量の花からほんのわずかしか抽出できないため、高価なものばかりです。
たとえば、ローズは100本の花からたった1滴しか採れないといわれていて、5ml(小さじ1杯)入りの小瓶が3~4万円します。
でも、だからと言って似たような香りで代用しても意味はありません。
ローズの香りの洗剤、ローズの香りの室内芳香剤など、「ローズ」と書いてあっても、それは合成香料の香りです。成分は全く異なり、天然精油と同じ作用はありません。

香りについてはまた別の記事で詳しくご説明します。

授乳中は増加

乳汁分泌促進の女性ホルモンとして知られていたものなので、授乳中には当然増えます。

アロマトリートメントが最も効果的

オキシトシンの増やし方を色々紹介しましたが、最も効果的でお勧めなのはアロマトリートメント(アロマ精油を希釈したトリートメントオイルを使ったマッサージ的なケア)です。アロマトリートメントは、触れ合うことと、本物の香りの効果を同時に取り入れられますし、優しく話しかけるなど他の要素も組み合わせると更に効果的です!
そして、もっと素敵なことに、アロマトリートメントの効果には、双方向性があります。
つまり、「子どものオキシトシンが増えてほしい!」と思って働きかける母のオキシトシンも増加するのです。

まとめ

以前は女性特有のものだと思われていたオキシトシンですが、現在は脳の神経伝達物質としての働きが注目され、研究が進められています。
そのうちのひとつが自閉症の改善です。
オキシトシンは体内で作られるものなので、ちょっとした工夫で増やすことも可能で、特にアロマトリートメントは複数の効果の組み合わせが期待できるので最もおすすめの方法です。
発達障がいの子どもとの関わりに、ぜひ、アロマを取り入れてみましょう。

参考書籍

オキシトシンについてもっと知りたい方はこちらの本がおすすめです。オキシトシンの役割やセロトニンとの関連など、分かりやすく説明されています。

講座の続きはこちら
【2】発達障がい児も母も双方向でオキシトシンが増えるアロマセラピーのメカニズム